No.565 高濃度ビタミンC点滴療法
こんにちは!
名古屋市、大治町、清須市、津島市、稲沢市、愛西市の近隣にあるあま市のあま動物病院の獣医師の関です。
だいぶ寒さが増してきて巷ではインフルエンザが流行ってきていますが、皆さん元気でお過ごしですか?
もうすぐ今年も終わりますので、体調には気を付けて、よい新年をお迎えくださいね。
本日は、人の医療でも取り入れられている高濃度ビタミンC点滴療法について、ご紹介です。
当院でも治療の選択肢としてご提案可能ですので、ぜひご一読ください。

目次
1,高濃度ビタミンC点滴療法とは?
2,高濃度ビタミンC点滴療法のメリット
3,濃度ビタミンC点滴療法の副作用
4,高濃度ビタミンC点滴療法のデメリット
5,どんな場合に適している?
6,まとめ
1,高濃度ビタミンC点滴療法とは?
高濃度ビタミンC点滴療法は、がん治療をサポートする補助療法として注目されている方法です。
もともと1970年代からビタミンCががん治療に役立つ可能性が報告されていました。
通常のビタミンCは抗酸化作用があることは多くの方がご存じかと思います。
このビタミンCを大量に血管内に投与すると逆に酸化作用を発揮し、体内で大量の過酸化水素を発生させます。
正常な細胞は過酸化水素を中和する酵素を持っているため障害を全く受けないのですが、がん細胞はこのような酵素を十分に持っていないものが多く、過酸化水素ががん細胞に入り込み障害を与えて、がん細胞を壊します。
近年の研究や臨床試験により、人のがん患者さんの生活の質(QOL)を向上させる効果が確認されています。
この療法は、化学療法や放射線治療と併用することも可能で、副作用ほとんどないのが大きな特徴です。
また、がん予防効果や免疫力向上作用があることから、定期的に病院に通って点滴を受けている方もいます。
最近では、歯周病の予防の効果から歯科医院でもおこなわれています。
このことから、犬猫などの動物に対しても同様の効果が期待され、動物用に治療計画も設定されています。

2,高濃度ビタミンC点滴療法のメリット
①抗がん作用
高濃度のビタミンCはがん細胞を直接攻撃する働きがあります。
②治療効果の補助
標準的ながん治療(化学療法・放射線治療)の効果を高め、副作用を軽減する働きが期待されています。
③副作用がほとんどない
副作用は後述しますが、ほとんどないのが大きなメリットです。
④疲労回復
ビタミンCが効率的に体内に吸収されるため、疲労、倦怠感、痛み、食欲低下、不眠などの症状を軽減し、患者さんの生活の質を向上させます。
⑤免疫力向上
白血球の働きを強化することで免疫力を向上させます。
3,濃度ビタミンC点滴療法の副作用
副作用の発生は稀ですが、次のような副作用が報告されています。
①腫瘍からの出血
これは化学療法でも見られることのある副作用ですが、腫瘍細胞を攻撃するため腫瘍から出血することがあります。
②人では一過性の吐き気や頭痛、点滴部位の疼痛が認められることがある。
動物でも同様の症状が出る可能性があります。発生頻度としては高くはなく、私も何度か受けたことがありますが、特にこのような副作用は出ませんでした。
③腎疾患、心疾患には慎重投与が必要
血管の中に点滴投与するため、投与量や投与速度によって腎臓・心臓に負荷をかけますので、慎重な投与が必要です。
④肥満細胞腫の犬には投与の検討が必要
投与すると、肥満細胞が障害されてヒスタミンの脱顆粒が起こりショックを起こすことがあるため、肥満細胞腫の犬への投与については慎重に検討する必要があります。
⑤遺伝子(G6PD)欠損があると溶血が起こる
低濃度から投与するとともに、遺伝子検査が必要になります。
遺伝子検査は、結果が出るまでに1週間ほどかかります。
人も動物も治療計画では、初回の低濃度からのビタミンC投与を開始する際に一緒に検査をします。
上記の副作用の発現を抑えるために、1週間ごとに4~6週間かけて段階的にビタミンCの濃度を上げていきます。
4,高濃度ビタミンC点滴療法のデメリット
①実施できる施設が限られる
高濃度ビタミンC点滴療法で使用するビタミンCは、国内の医薬品メーカーで作られている濃度では全く足りないため、海外の医薬品を輸入する必要があり、入手が難しくなっています。
また、遺伝子(G6PD)欠損の検査も特殊な検査になるため、検査を依頼できる医療機関が限られています。
②継続が必要
高濃度ビタミンC療法だけで、腫瘍が完治することはありません。あくまで補助療法であり、腫瘍の進行を抑制したり、症状を改善することで、寿命を延ばしたり、QOL(生活の質)を向上させることを目的にしています。
治療は週1~3回を継続的に行っていく必要があるため、数回やって終わりではなく、継続していくことが必要となります。
1回あたり1.5~3万円ほどの費用がかかってきます。

5,どんな場合に適している?
・現在、有効な治療法がない
・抗がん剤や放射線療法の効果が出ない
・標準的ながん治療では副作用が強すぎて継続できない
・何らかの理由で飼い主様が標準的ながん治療を選択しない場合の代替療法
・抗がん剤や放射線療法にさらに追加で治療をしたい
・これから手術を控えている場合の術前療法、また術後療法として
・がん転移予防、がん予防
・ウイルス疾患、アレルギー疾患、免疫疾患、歯周病などにも
6,まとめ
高濃度ビタミンC点滴療法は、がん患者さんにとって体への負担が少なく、標準治療の効果の増強や副作用の軽減、QOLの向上が期待できる補助療法です。また、がん予防、がん転移予防、免疫力の向上、疲労回復、歯周病抑制にも効果があり、がん治療以外の健康促進としても注目されています。
もし高濃度ビタミン点滴療法に興味がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
