スタッフ日記

大治町、清須市、津島市、愛西市、稲沢市、中村区、中川区の近隣にありますあま市のあま動物病院の関です。

明けましておめでとうございます。
本年は昨年より一層皆様のお役に立てるように、診療体制の充実を目標に頑張って参ります。


実は昨年の11月は、椎間板ヘルニアの症状でご来院される患者様が、多くいらっしゃいました。
先月のブログで用意しておいたのですが、お知らせを書かせて頂いたため、公開せずにそのままになっておりました。
今回は、椎間板ヘルニアのことについて少し書かせて頂きます。
一口に椎間板ヘルニアといっても、その症状は様々です。

グレード1 痛がるのみ。普通に歩くことはできる
グレード2 歩けるが、もたつく、ふらつく、転ぶなどの症状を伴う
グレード3 足は動くが、立てない
グレード4 足が動かないが、痛みは感じる。自分の意思で排尿できなくなる
グレード5 痛みも感じない

診断には、MRIやCT、脊髄造影X線検査などが必要になりますが、年齢や犬種、症状や、症状の出方、神経学的検査などから、おおよその診断をつけることができます。

今月に当院で椎間板ヘルニアと診断し、手術をした2頭のワンちゃんを紹介したいと思います。


1頭目のワンちゃんは、14歳のミニチュアダックスフンドの子です。
1日前に急に立ち上がれなくなってしまったとのことで来院され、来院時には4本の足が動かない状態でした。
横に寝たきりでしたが、首だけ少し動かしてワンワンと吠えることはでき、食欲もありました。
首の椎間板ヘルニアと思われたため、検査をお勧めしました。
当院にはMRIがないため、脊髄造影X線検査での検査になります。
MRIのメリットや脊髄造影X線検査のデメリットをお話しし、MRIをご希望の方は、MRIのある2次診療施設へご紹介します。
今回は、当院での脊髄造影X線検査をご選択いただき、実施しました。

脊髄はX線では通常写りませんが、造影剤を入れることで浮かび上がらせることができます。
写真で首の骨の中に二重の線が見えるかと思います。


この部分が脊髄です。
そして、一部山なりに凹んでいる部分が、椎間板ヘルニアを起こして首の下の方から脊髄が押されている部分です。
この飛び出た椎間板物質を取り出すために、首の下側から皮膚を切開して、首の骨を削ります。

写真の矢印の部分が、骨を削って穴をあけた部分です。


ここから椎間板物質を掻き出して取り出しました。
手術翌日には尾を振れるようになり、


2日目の朝には足が動き、夜には立てるようになり、3日目には歩けるようになりました。


2頭目のワンちゃんも7歳のミニチュアダックスフンドの子です。
4日前から後ろ足が動かなくなり、かかりつけの病院で椎間板ヘルニアの内科療法を実施していましたが、改善が認められませんでした。
来院時、前足の動きは正常でしたが、後ろ足は動かず、排尿もできない状態でした。
痛みも皮膚をつねる程度では感じず、骨を鉗子でつまむと少し感覚が認められました。
胸腰部椎間板ヘルニアのグレード4と仮診断し、その日のうちに検査を実施し、脊髄の圧迫所見を確認したため手術を行いました。
腰の椎間板ヘルニアの場合、片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)という方法が一般的に行われていますが、今回は小範囲片側椎弓切除術(ミニヘミラミネクトミー)という術式で実施しました。


この方法は、視野が狭くなるため慣れないと難易度は増しますが、片側椎弓切除術よりも侵襲性が少なくすむという利点があります。
手術時、大量の椎間板物質が確認できました。
写真の椎間板物質はその一部で、出ていたものはこの3~4倍ありました。


腰の回復は首に比べてゆっくりなことが多いのですが、翌日には自力排尿ができ、2日目には尾を振れるようになりました。
その後少しずつ足が動くようになり、手術から10日ほどで歩けるようになりました。

椎間板ヘルニアの予防は難しいですが、フローリングなど滑りやすい床での生活や、太らせないようにしてあげてください。